撮影ー宝塚月組「夢現無双」佐々木小次郎

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最近作った衣装をご紹介。

月組『夢現無双』の美弥るりかさんの佐々木小次郎の衣装を作りました。

この衣装、美弥るりかさん(以下みやちゃんと呼ぶことをお許しください)にとてもお似合いでかっこよくて大好きでした。

衣装を作るとき、ありとあらゆる資料を集めるべく、舞台写真を見たり、宝塚関係の雑誌を買ったり、パンフレットをみたり、スカステをスロー再生しながら写メとったりして、衣装の細部までどうなっているのか研究します。

その衣装研究が大変だけれど私は好き。ここはこうなっていたのか、とか製作者の拘りだとかを発見することができるからです。

今回は佐々木小次郎の技「燕返し」から、背中が燕のようになっていることに一番感動しました。背中の模様も最初資料が足りなくて盛大に間違えてしまったのだけれど、左右非対称で、前とも繋がっていて、おそらく燕と波。模様にも意味があるんですよね。
中の着物にも模様があって、燕の羽みたいだなと思いながら模様を書いてました。

和裁の先生をやっていた母が着物と羽織と袴を作ってくれました。母の着物は着物のつくりと一緒で手縫いなんです。

私が布を選びました。袴のグラデーションをどうしても再現したくて、グラデーションにこだわったのと、羽織と着物の生地の素材感の違いや色も公式を意識して選びました。コスプレでもそうだと思うけれど、布選びに制作するファンの想いが現れると思うし、布選びで全く違う仕上がりになるから、私は理想の布の組み合わせが買えたときに、いつも満たされた気持ちになります。

この衣装を作りながら、刀の背負い方、抜刀の仕方を学びました。

みやちゃんは上の写真のような紐の回し方で普段背負っているのですが、抜刀するにはこの左結びではなかなか難しくて。紐の部分を刀を持つ手と逆の手で下に引いて鞘を跳ね上げる必要があるからです。

パンフレットの、振り向きざまに抜刀している写真のはどうしているんだ…と思ったらポスター撮影およびパンフレットの撮影時には刀が抜けるような右側での結び方になってました。なかなか衣装作らないと気づかないですよね。公演中の抜刀シーンはどうだったかな。

刀は伊達さんから借りてビニールテープで一時的に赤くし、脇差しは小田原城でキーホルダーになっている刀を買ってきました。なぜに小田原城。

スタジオのどこで撮ろう…と思っていたら絵の中に十字架を発見したのでその前で。

十字架といえばアクセサリーのクロスも作りました。完成したところで取り落してビーズがバラバラになって絶望した思い出。

私の大好きなお友達がみやちゃんをずっと近くで応援していたのもあって、個人的にとても思い入れのある方です。

とあるお茶会で、初めてあった人に「みやちゃんの目に似ている」といっていただいたことがあって、お世辞に間違いないとはわかりつつもものすごく嬉しくて。だってみやちゃんのまっすぐで誠実な瞳が私は大好きだから。

好きなお役はいくつもあるけれど、私にとって佐々木小次郎は特別にかっこよくて。ため息が出るほどの美しさ。

退団が決まっていたのもあって、どうしても在団中にみやちゃんの生きた男役を表現したく、退団公演である「夢現無双」の佐々木小次郎を選びました。

 

「夢現無双」というタイトルに込められた思いをずっと考えています。たった4文字にいろんな意味が込められていると思うのだけれど、「夢はうつつ(現)、双(二人で一つ)で無くなる」という風に私には見えました。

武蔵(=珠城さん)的には「無双という夢が現実になる」というところでしょうか。「夢現(ゆめうつつ)の無双」という意味かもしれない。どちらにせよなんて切ないタイトルなんだろう、と私は思うのです。

 

退団は何度経験しても寂しいし悲しい。

それでも宝塚の夢の世界は、限りあるから美しくて、その決められた時間の中で精いっぱい生きるから、彼女たちは何よりも輝いていると思うのです。退団に向かって高まっていくエネルギーと、最後の最後の瞬間である、退団の日の煌めき、私は一生忘れません。